剣道家をめざすセンセのぶろぐ。

「師弟同行」教うるは学ぶの半ばなり、、、どちらもまだまだです。

2013年 剣道用具考

竹刀の「乾燥」工程について考えた:ヲタクっぷり[32]

竹刀は乾燥する季節にはとても割れやすくなっているのに、なぜその工程で乾燥させるの???

全剣連DVD「竹刀ー剣道の発展を支えた竹刀の歩みー」の1シーン
全剣連DVD「竹刀ー剣道の発展を支えた竹刀の歩みー」の1シーン

とある方が、疑問を持っているんです。
まぁ、そういわれると気になるものですね、、、その切り口を知り合いの床ヲタクさんに求めてみました。

このポスト、前もっていっておきますが、あくまでも素人の考えかもしれません。
直接、竹刀師さんやメーカーさんなど、竹の専門家から聞いたわけではないのですから。
その彼は、わざわざ竹刀制作所にまでいって質問してもわからなかったと書いてますね(以下ブログ)。
ホント熱心です、、、あはは。

>『一生懸命一生懸命一生剣道』:社会科見学・安達竹刀製作所

 

竹刀についての工程は、現在のかなりの部分を、機械で制作されるようになったといえ、おおまかに以下のような工程を辿ることとはかわっていません。

・「伐採」:真竹の場合は3年以上育ったもの。
・「乾燥」:元来は陰干し、2年以上自然乾燥を行う、人工乾燥もある。
・「防虫防かび処理」
・「小割り」:1本の竹を6〜8枚に割る。
・「そば取り(横取り)」:4枚の竹の幅をそろえる。
・「矯め(ため)」:熱を加えながら竹のまがりやねじりをなおし、竹の繊維をまっすぐにする。
・「面取り」表は丸みをつけ、裏は4枚が合わさるように45度の角度をつける。
・「面の取り直し」

以下の工程は以下のチャンネルで映像で見ることができますし、全日本剣道連盟のDVD「竹刀ー剣道の発展を支えた竹刀の歩みー」も、とても参考になる資料です。ご紹介しておきます。

> サイエンスチャンネル:(237)竹刀ができるまで
> 全日本剣道連盟オンライン・ショッピング:DVD「竹刀ー剣道の発展を支えた竹刀の歩みー」

 

さて、、、

話はややちがうかもしれませんが、、、建築に用いる木材も製材する過程で乾燥をさせます。
ここに竹刀にも同様の乾燥させる工程の意味合いとなるヒントがあるのではないかと思い、敬愛してやまない床ヲタクさんに木材の乾燥について、教えてもらうこととしました。

建築用の木材を考えた場合、重要なのはその「含水率」だそうです、、、水分の含まれる量が大事なんですね。
これは、剣道場も一緒なんです、、、。

木材中には「結合水」と「自由水」というのがあり(ここでは名前だけ、詳細はお調べください)、自由水がぬけきったところが「繊維飽和点」というそうです。
これは、樹種に関係なくこれは25〜30%のところにあるそうです。
含水率について、JAS規格では、木材を乾燥剤として使う場合は、20%以下と定めており、建物の場合、構造材で18%前後、フローリング・内装材で13%前後がベストだそうです。

 

そして、木材を乾燥させる効果とそれにかかる問題を簡単にあげると、以下となるようです。

<木材乾燥の効果、、、床ヲタクさんとのやりとりから>

◯「くるい」をなくす
「割れ」「曲がり」「縮み」といった工程上不必要な要素をなくす。「応力」という表現をされてましたね、、、なるほど。

◯「腐れ」を防ぐ
腐朽菌が、温度、酸素、水分、栄養分の条件が揃った時に腐れを起こす。水分をなくすのが最も簡単な方法。

◯「強度」のアップ
強度特性は繊維飽和点を境界に変化するが、基本的に乾燥すればするほど表面は繊維方向には硬くなる。ただし、乾燥させすぎると強度はでるが、粘りがなくなり折れやすくなる。この折れやすくなるのが、乾燥する冬時期の竹刀の割れる問題かもしれませんね。

 

はい、これでだいたい見えて来たんじゃないでしょうかね!!!
「強度」をあげるには、乾燥という過程が必要なのですね。
水分が多ければ柔らかい、乾燥すると硬くなるってのは非常にわかりやすく、硬くなりすぎると折れやすくなるというのも、そのまま、竹におきかえても理解出来ます。

 

「腐れ」については、梅雨時にちゃんと保管しないでカビを生やしたこともあるでしょう、、、そう、水分が多いのもまたダメなんですね。

 

そして、「くるい」をなくすということ、、、
以前、以下のポストで竹刀の割ることの効果、先人たちの知恵の集まりだと書いています。
また、わたしのぶろぐでもっともアクセスの高い竹刀えらびのポストでも削りが重要と書きました。

> 拙ぶろぐ:古人の知恵「竹刀編」:ヲタクっぷり[10]
> 拙ぶろぐ:竹刀をえらぶ基礎知識:ヲタクっぷり[13]

そう、竹刀がなければ、剣道はなりたたないと思っていますし、こういう効用がしっかりと出せるものをメーカーさんにはしっかりと担保してもらいたいものです。

あ、話は少しズレました。
曲がりなどを全部だしてから、「矯め」をいれるとも聞いたことがあります。

 

このように、竹刀も4枚の竹の合わせなどを繊細につくることによって、竹刀としての機能が醸しだされているのです。
つまり、乾燥させることで、強度を持ったうえに、細工を緻密にできる「竹」にするための重要な過程であることが考えられますよね。

使っているうちに縮んだり、歪んだり、曲がったり、、、これではダメですし、ユーザー、プレーヤーとしても困りますからね。
(しっかりつくられた上で、竹の特性である撓りがあるのは、安全上、当然必要だと思います)

 

 

さてさて、、、

建築木材にも自然乾燥と人工乾燥があるようです。

自然乾燥のメリットは色むらが出難くエキスが木材内に残るためにすばらしい色艶が出やすかったり人間にとって肌触りも良いようです。木材の内部割れも少ない そうです。デメリットは当然時間のかかることだけでなく、大量生産した際に人工乾燥材と比べて含水率のバラツキが多く大型工場で大量生産はなかなか難しい とのことです。

一方、人工乾燥は大きな大きな乾燥室に木材を入れて熱や高周波を当てたりして強制的に木材内の水分を 排出するらしいのです(方法はいろいろとあるようです)。メリットとしては、大型製材所が計画的に材木の生産できる点、デメリットは、木材に急激な変化を 与えるために木材内部に割れが入ったりするそうです(これは表面からは見えないので非常に厄介らしいです)。

 

実は竹刀にもありますね、、、人工乾燥。
冒頭に書いた工程のなかで、「陰干し」と「防虫防かび処理」を一緒にして、苛性ソーダなどをいれて煮沸してしまう方法が。
こうすると、茶色になるという見た目をよく(?)することと、乾燥時間の短縮ができるようです。
へそ曲がりの私のように、最近では少々青っぽい竹をみると、自然乾燥だととっても安心してしまうのは私だけではないと思いますけど、、、まぁ、なかなかもう入手できませんが。

 

ここで、、、木材の自然乾燥のメリットに「エキスが木材内に残る」とあります。
床ヲタクさん曰く、木材には「エキス(extract)」が重要、なのです。

竹刀では、油(?)でしょうか・・・まぁ、竹の粘りや強さのエキスといえるものがあるとすれば、「竹油」もありますから油でいいのかな、人工乾燥の場合はこれがなくなるといえるでしょうね。

これを抜いたところに樹脂のようななにかを注入したという竹をつかった竹刀があったように記憶していますが、、、どうなったのでしょう。

ただ、すでに今出回っている竹刀の竹はほとんどが海外のものですから、この乾燥の過程に期待はできないかもしれません。
したがって、手入れをして、使っていくしかないかもしれませんね(以下、拙ポスト参照)。

 

とくに、竹は伐採され生命を絶たれていて、竹自身が調整することはないでしょうから、自然の乾燥する時期や湿気の多い時期の影響に対応するように、湿気からガードする(ビニール袋にいれておく)、油をさすなどして、命をあたていかないといけないんでしょうね。

 

大昔の剣道家たちは、いい竹、いい仕事でつくられた竹刀でも、毎回のように使用後は弦を緩めて手入れして使っていたんですから、使う側にも大きな問題があるかもしれません(自省込み)。

> 拙ぶろぐ:竹刀は植物系…続・竹刀の基礎知識(お手入れ編):ヲタクっぷり[31]

 

あと、追加情報ですが、割れやすいからといっても、プレーヤー、ユーザーとしてやれることはあります。

以下のポストの末尾にあるように、機械での制作が中心となってから、柄革の部分をボンドづけしてグラインダーなどで円形をつくっていることも多く、ここのボンドを剥がさないと、竹刀が4つ割である意味がなくなってしまいますからね。 

> 拙ぶろぐ:柄革をキメる!:ヲタクっぷり[7]

 

 

 

 

 

 

どう???
はしもとくん(笑)

 

 

ありがとうございました、床ヲタクさん。
今度、小手をメンテさせていただきます( ー`дー´)キリッ

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2 コメント

  1. なるほど。竹刀を乾燥させる工程は必要不可欠ですよね。竹の強度を保つ為に乾燥させる。しかし、冬場は乾燥しすぎて竹の強度が増す・・・そうすると撓りなどの遊びがないため、衝撃を外に逃がせなくなる。よって、割れやすくなる・・・といったところなんでしょうか・・・
    とにかく命を与えるのが一番なんですね。

    ちなみに、年末年始で竹刀を油に浸しておいたんですが、その竹刀が昨日割れました・・・
    やはり、どんなに命を与えても割れる時は割れるんですね・・・

    ちょっとショックでした。

  2. なるほどこう言う事だったんですね。
    基本的に物質は、硬いと脆いと言われているので竹刀も乾燥しすぎると弾力性が無くなり折れるのかな?
    身近なところでは極端ですが乾物がこれに当たるのかもしれません。乾燥春雨はそのままだとポキポキ折れますが水分を含むと美味しくいただけます。乾燥メンマや干物のスルメなんかも似てますかね?含水率って重要です。フライドポテトもジャガリコになりかねないですからね^^;
    我がコテのチューニングを是非またお願い致します。

    2013年1月22日 7:57

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